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とりとめもないこと。

【レビュー】『ベーシック移動現象論』移動現象論の参考書としてオススメ

吉川史郎『ベーシック移動現象論』化学同人

 

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【目次】

第I部 イントロダクション
第1章 移動現象とは

第II部 運動量移動
第2章 流体の粘性―レオロジー
第3章 流れの状態の表現・分類
第4章 運動量の収支―シェルモーメンタムバランス―
第5章 一般的な物理量収支式
第6章 三次元流れ場における運動量収支式
第7章 乱流
第8章 流体の機械的エネルギー収支と摩擦損失
第9章 物体の周りの流れ
第10章 流れ関数と速度ポテンシャル
第11章 境界層理論

第III部 熱移動
第12章 伝導による熱移動における収支―シェルヒートバランス―
第13章 三次元流れ場における熱収支
第14章 対流伝熱
第15章 放射による熱移動
第16章 さまざまな場における熱移動現象

第IV部 物質移動
第17章 物質の収支―シェルマスバランス―
第18章 三次元流れ場における物質収支
第19章 対流物質移動

 

【感想】

 移動現象論は流体力学(運動量輸送)、伝熱工学(熱輸送)、輸送現象(物質量輸送)の3分野を総括して学ぶ学問で、この本でも上記の3分野をカバーしている。

 基本的に式の導出は丁寧なので式変形のトレースに困ることはない。しかし、複雑で導出が面倒な式は過程が省かれ結果だけ示されることもある。また、詳細は『流体解析』や『化学工学のための数学』に譲るとされている箇所もあり、かゆいところに手が届いていない感じもする。

 

achiranagih94.hatenablog.com

 

 3分野をカバーしている都合上、流体力学や伝熱工学と比べ取り扱い範囲が狭い印象がある。しかし、粘性散逸が解説されていたり、流体力学の本では省かれがちな式やその導出が掲載されているため、流力、伝熱の参考書として所持するのは有りだと思う。

 また、輸送現象は反応工学や物理化学の本の端で説明されるくらいで、これをメインに取り扱う本は『物質移動解析』くらいしかないように思う。そのため、この本を輸送現象の参考書として持つのも良いかもしれない。但し、輸送現象は第IV部として掲載されており、説明や式の参照が第II部の流力や第III部の伝熱に跳んでいることが多く、読み進めるのが手間だった。