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【レビュー】『化学工学 改訂第3版 解説と演習』 幅広い範囲を扱った化学工学の演習書

化学工学会監修『化学工学 改訂第3版 解説と演習』朝倉書店

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【目次】

1章 化学工学の基礎
 1.1 単位と次元
 1.2 気体の状態方程式
 1.3 収  支
 1.4 燃焼計算
 演習問題
 
2章 流   動
 2.1 流体の流れ
 2.2 円管内の流れ
 2.3 流体の輸送
 2.4 圧力および流速,流量の測定
 2.5 流体輸送機器の種類と選定
 演習問題
 
3章 伝熱・蒸発
 3.1 基本的な伝熱機構
 3.2 伝導伝熱
 3.3 対流伝熱
 3.4 放射伝熱
 3.5 熱交換器
 3.6 燃焼炉設備
 3.7 蒸発装置
 演習問題

4章 蒸   留
 4.1 気液平衡
 4.2 単蒸留とフラッシュ蒸留
 4.3 回分精留と連続精留
 4.4 蒸留塔の設計
 4.5 特殊蒸留
 4.6 蒸留装置
 演習問題

5章 ガス吸収・膜分離
 5.1 気液平衡
 5.2 吸収装置
 5.3 吸収速度
 5.4 吸収装置の設計
 5.5 膜分離の基礎
 5.6 気体分離
 5.7 透  析
 5.8 限外濾過・逆浸透
 5.9 電気透析
 演習問題

6章 抽出・吸着
 6.1 抽  出
 6.2 吸  着
 演習問題

7章 調湿・乾燥
 7.1 調湿の基礎
 7.2 湿度図表とその使用法
 7.3 調湿装置
 7.4 調湿装置の容量計算
 7.5 乾燥の基礎
 7.6 乾燥装置の分類と操作方式
 7.7 乾燥装置の基本設計
 7.8 装置容量の計算
 演習問題
 
8章 粉粒体操作
 8.1 粒子の性質
 8.2 粉粒体層の性質
 8.3 粒子・流体系の性質
 8.4 粒子の生成
 8.5 分  級
 8.6 集  塵
 演習問題

9章 固液分離
 9.1 沈降分離
 9.2 濾  過
 9.3 晶  析
 演習問題

10章 攪拌・混合
 10.1 攪拌槽の構成
 10.2 流動特性
 10.3 攪拌所要動力
 10.4 混合性能
 10.5 スケールアップ
 10.6 攪拌槽伝熱
 10.7 気液系の攪拌
 10.8 固液系の攪拌
 10.9 液液系の攪拌
 演習問題

11章 プロセス制御
 11.1 プロセス制御とは
 11.2 制御ループの構成
 11.3 ブロック線図による解析
 11.4 ON/OFF制御とPID制御
 11.5 伝達関数による動特性の解析
 11.6 伝達関数と過渡応答
 11.7 システムの安定性,振動性と伝達関数の極
 11.8 伝達関数と周波数応答
 11.9 閉ループ系の安定判別:ナイキストの安定判別法
 11.10 基本要素のステップ応答と周波数応答
 11.11 内部モデル制御
 11.12 モデル予想制御による大規模システムの制御
 演習問題

12章 反応工学
 12.1 化学反応の量論と反応速度
 12.2 反応速度式
 12.3 反応器の分類と特徴
 12.4 回分反応器
 12.5 連続攪拌槽型反応器
 12.6 流通管型反応器
 12.7 反応器の比較
 12.8 反応速度式の決定
 12.9 バイオテクノロジー
 12.10 酵素利用プロセス
 12.11 微生物反応速度論
 演習問題

演習問題解答
付   録
索   引

引用元:朝倉書店| 化学工学 ―解説と演習― (改訂第3版)

 

【感想】

 化学工学の演習書。内容が詰まっている割に解説はそれほど丁寧ではない。初学者には向かないと思う。特に独学者が一から勉強するのにはオススメしがたい。挫折すると思う。教えてくれる人がいるとか、輪講などで誰かと読み解くとか、そういった目的には良い本だと思うけれど。

 化学工学便覧ほどではないが、単位操作の基礎に関して、たいていのことは載っている。なので、分からないことを調べるための参考書や公式集として手元に持っておくのはありだと思う。ただ、当たり前だが、取り扱う内容の深さは蒸留や晶析といった各プロセスを扱った本には及ばない。

 本書は、よくある演習書のように、はじめに各項目の簡易な説明があって、途中途中に例題が掲載されている。自分は例題の一部しかトレースしていないが、解説は章によって丁寧だったり雑だったりする。あと、各章末に問題が掲載されているが、答えは巻末の略解だけ。

 もし化学工学を独学するなら、この本よりも『ベーシック化学工学』(橋本健治、化学同人)とか『標準化学工学』(化学同人)がオススメ。初心者向けに解説が丁寧で優しい。他の化学工学の演習書としては『化学工学演習』(藤田重文、東京化学同人)がある。この演習書は本書よりも内容が浅いが、解説は丁寧な印象を受けた。

 最初に書いたように本書は独学には向かない。しかし、基礎的なことに関しては概ね載っているし、索引も充実している。なので参考書として用いるのが良いと思う。