かなたはて

とりとめもないこと。

【レビュー】重合反応装置の基礎と解析

著者:村上泰弘

『重合反応装置の基礎と解析 高粘度液の操作を中心に』

出版社:培風館

出版年:1976年

頁数:165

【目次】

1 緒言

2 高粘度重合反応装置の型式

 2.1 可動型高粘度系装置

 2.2 非可動型高粘度系装置

3 高粘度液の工学物性値

 3.1 密度の測定

 3.2 粘度の測定

 3.3 水分の蒸発特性と水分率の測定

 3.4 界面張力の測定

 3.5 気泡系分布と粘度の上昇

 3.6 拡散係数の測定

 3.7 熱伝導率の測定

4 高粘度重合反応装置内の流動

 4.1 フローパターンの測定法

 4.2 平均流速分布からの情報

 4.3 せん断速度からの情報

 4.4 フローパターンの測定

5 高粘度重合反応装置内の混合

 5.1 反応過程への混合効果の考慮

 5.2 巨視的混合

 5.3 微視的混合

 5.4 せん断場での混合過程

6 高粘度重合反応装置内の伝熱

 6.1 攪拌槽伝熱係数の推算式と無次元数の依存性

 6.2 伝熱係数の測定法

 6.3 攪拌槽壁側伝熱係数の推算式に関する諸問題

 6.4 塔型装置の伝熱問題

 6.5 特殊型装置の伝熱問題

7 高粘度重合反応装置内の物質移動

 7.1 表面更新速度の定量

 7.2 表面更新速度の測定法

 7.3 表面更新速度の整理

 7.4 物質移動操作の諸プロセスへの応用

8 高粘度系重合反応プロセス

 8.1 高粘度系重合反応プロセスの動向

 8.2 典型的な高粘度系重合反応プロセス

 8.3 高粘度連続重合反応プロセス内のプロセス流体の平均流通速度

 8.4 高粘度重合反応プロセスの用役原単位

 8.5 高粘度重合反応プロセスの建設コスト

 8.6 高粘度重合反応プロセスの選択上の留意事項

文献

索引

 

【感想】

  書名に重合反応装置と掲げているが、内容は高粘度液体を対象とした撹拌操作の技術書だった。

 紙面の関係か、昔の書籍ゆえか、解説は懇切丁寧というわけでなく、必要なことのみ書かれていた。また、本文には上梓当時1976年の最新の情報が多々紹介されている模様。そのせいか、文末も「~の可能性がある」とか「~と考えられる」のように歯切れが悪い。

 内容としては、1章は高粘度液のハンドリング方法の概説。

 2章は高粘度液を混合するためのさまざまな装置の説明。

 3章は種々の液物性の測定法の概説。実験法の解説はこの章に限った話ではなく、本書は全体を通して高粘度液を対象とした実験法、測定法が色々と紹介されていた。しかし、これらの手法はかなり昔の原始的な方法のようで、いまはもっと良い方法、例えばPIVのような、があるのではないかと感じた。

 4、5章は高粘度液の反応装置内での挙動の解説。撹拌翼の種類によって、ナビエ・ストークス方程式のどの項が支配的になるのかが示されていて、興味深かった。

 6章は高粘度液の伝熱の解説で推算式が紹介されていた。ただし、著者としては推算式の妥当性とか精度に幾分疑義がある様子。

 7章は反応装置におけるガス吸収や混合を対象として、液の表面更新速度について解説している。

 8章はこれまでの章とは趣が変わり、高粘度液を扱うプラントの話となっている。ただ、内容は広く浅くだった。

 読んで損はしなかったが、如何せん内容が古く、また難解であったため、得るものは少なかった。でも4、5章は読めて良かったとも思う。