【レビュー】『世界史を大きく動かした植物』 世界史を作物の観点から語った本
著者:稲垣栄洋
『世界史を大きく動かした植物』
出版社:PHP研究所
出版年:2018年
【目次】
はじめに
第1章 コムギ―一粒の種から文明が生まれた
第2章 イネ―稲作文化が「日本」を作った
第3章 コショウ―ヨーロッパが羨望した黒い黄金
第4章 トウガラシ―コロンブスの苦悩とアジアの熱狂
第5章 ジャガイモ―大国アメリカを作った「悪魔の植物」
第6章 トマト―世界の食を変えた赤すぎる果実
第7章 ワタ―「羊が生えた植物」と産業革命
第8章 チャ―アヘン戦争とカフェインの魔力
第9章 サトウキビ―人類を惑わした甘美なる味
第10章 ダイズ―戦国時代の軍事食から新大陸へ
第11章 タマネギ―巨大ピラミッドを支えた薬効
第12章 チューリップ―世界初のバブル経済と球根
第13章 トウモロコシ―世界を席巻する驚異の農作物
第14章 サクラ―ヤマザクラと日本人の精神
おわりに
参考文献
【感想】
本書は作物利用の観点から世界史を語った本。あまり見たことがない種類の本なので新鮮だった。
各章ではそれぞれの植物が、どういう経緯で人間に探されて、どのように利用されて、どういった理由で世界中に広まったのかが書かれている。たとえばコショウやトマト、ジャガイモの章では、原産地からヨーロッパに持ち帰られた背景とそこから世界中に広まった経緯がやさしく解説されている。
また章によっては各植物の特徴を深掘りしていて、こういう特徴があるからこそ人類に利用されているといった説明がなされている。トウガラシが寒い西洋ではなく暑い東洋に広まった理由も面白かった。ほかに、イネやジャガイモの章では人類がそれらを発見するまでと、発見・利用したあとでの生活の変化が描かれていて興味深かった。
結構楽しく読めたが、少し読みにくい文章構成の箇所が所々にあって頭に入りにくかった。あと、図が一切なかったのも残念。植物の移動経路とか地図で示してくれるとすごく面白かったと思う。
それと作物から世界史を語りすぎているきらいがあると思う。どういうことかというと「あの事件の裏には、この作物に起因するこんな理由があったのだ」のような解説箇所が散見される。作物利用による人の生活の変化が、確かにその事件や戦争の一因や遠因になったとは思う。けれど、ほかの本では同じ事件に対して、別の解説がなされているので、作物に起因する情勢だけで、それらの事件が起こったわけではないと思う。
総評はまあまあオススメ。教養本として面白かった。この本を読んで、作物から見た世界史だけでなく、農機具から見た世界史とかも書けそうだなと思った。
本書のコンセプトが面白かったので『塩の世界史』とか『エネルギーの人類史』『銃・病原菌・鉄』も探して読んでみようかと思う。
あと、本書に似たようなコンセプトの本として『疫病と世界史』を思い出した。これは、疫病の解説と人類がいかにそれを克服してきたかを解説した本。まあまあ面白かったけど、難しかったので残念ながら放置中。再読してみようかと思う。