かなたはて

とりとめもないこと。

【レビュー】『スケールアップの化学工学』

著者:山口由岐夫

『スケールアップの化学工学』

出版社:丸善

出版年:2019年

 

https://www.maruzen-publishing.co.jp/fixed//images/book/303270/303270.jpg 

 

 

【目次】

第1章 現代的スケールアップ  
 1.1 化学工学体系とスケールアップ  
 1.2 時空間のスケールアップ   
第2章 材料の構造形成  
 2.1 相分離と相転移  
 2.2 熱力学的非平衡相転移
 2.3 流体力学非平衡相転移
 2.4 スケールアップのアプローチ
第3章 律速過程
 3.1 反応・拡散過程の律速
 3.2 乾燥過程の律速
 3.3 析出過程の律速
第4章 非平衡性と非線形
 4.1 非平衡系 
 4.2 非線形性 
 4.3 特異点 
 4.4 ヒステリシス
 4.5 インキュベーション
 4.6 自励振動
 4.7 非線形系のスケールアップ
第5章 流動特性
 5.1 層流と乱流
 5.2 混相系の流動特性
 5.3 粉体の流動特性
 5.4 紡糸の細線化流動
第6章 反応プロセス
 6.1 反応器モデル
 6.2 不均一系反応器
 6.3 微粒子合成反応器
 6.4 固相反応器
 6.5 ゾル‐ゲル法反応器
第7章 析出プロセス  
 7.1 析出特性  
 7.2 二段核発生説 
 7.3 核成長とオストワルドライプニング  
 7.4 晶析プロセス 
第8章 分散プロセス  
 8.1 熱力学的分散  
 8.2 流体力学的分散  
 8.3 凝集構造と性能 
 8.4 分散プロセスのスケールアップ  
第9章 混錬プロセス  
 9.1 材料とレオロジー特性 
 9.2 混錬のダイナミクス  
 9.3 混錬の効果  
 9.4 混錬プロセスのスケールアップ  
第10章 塗布プロセス  
 10.1 塗布方式  
 10.2 塗布流動 
 10.3 塗布欠陥  
 10.4 スケールアップ 
第11章 乾燥プロセス  
 11.1 乾燥特性と律速過程  
 11.2 乾燥特性の予測  
 11.3 噴霧乾燥  
 11.4 乾燥欠陥  
 11.5 乾燥シミュレーション  
 11.6 乾燥による構造形成  
 11.7 乾燥プロセスのスケールアップ 
第12章 気相薄膜プロセス  
 12.1 気相薄膜の構造形成  
 12.2 CVD  
 12.3 pCVD  
 12.4 スパッタ 
 12.5 蒸着  
 12.6 気相薄膜プロセスのスケールアップ  
第13章 スケールアップのまとめ  
 13.1 スケールアップの評価指標  
 13.2 材料・プロセスの構造形成  
 13.3 スケールアップ則のまとめ  
 13.4 スケールアップの課題  
 13.5 おわりに 

引用元:https://www.maruzen-publishing.co.jp/item/?book_no=303270

 

【感想】

  全体的にもう少し踏み込んで書いてほしかった。200ページ程の薄い本なので仕方がないところもあるのだろうけど。内容が興味深かっただけに少し残念。

 ただ、内容の深堀り度合いが少し浅いとはいっても、他の化学工学の本であまり言及されていない事柄に言及していたのはありがたかった。

 例えば、律速過程の章における反応律速と拡散律速の話は参考になった。今まで人づてで律速の話を聞いたことはあるが、これに言及した文献は見たことがなかった。

 また『スケールアップの化学工学』というだけあって、各章に反応装置のスケールアップ時に参照すべきファクターが説明されている。他の化学工学の本にも、スケールアップ時にどの無次元数やどの因子を一定にすべきかという説明はある。しかし、本書ではそれらの因子を一定にしたときの物理的な意味合いが解説されていて参考になった。

 本書は各章ごとに簡単な解説と章末例題、参考文献で構成されている。例題は概ね反応工学の問題で、その解説はそこそこ詳しい。また第13章は今までの章の総まとめになっていた。

 4000円と少し値段が高い割に内容が少し薄く、残念な感じもするが、買ってよかったと思う。もう少し詳しく知りたくて、前著の『ものづくりの化学工学』も買ってしまった。