かなたはて

とりとめもないこと。

【レビュー】『講座・レオロジー』日本レオロジー学会編纂の参考書

日本レオロジー学会編『講座・レオロジー』高分子刊行会

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【目次】

第1章 レオロジー序論

第2章 高分子液体のレオロジー

第3章 高分子固体のレオロジー

第4章 高分子ダイナミックス

第5章 コロイド分散系のレオロジー

第6章 反応系のレオロジー

第7章 高分子加工のレオロジー

第8章 付録:高分子液体の構成方程式

索引

 

【感想】

 レオロジーに関する幅広い項目を扱ったA5版で263ページの本。日本レオロジー学会主催の講座に参加するとテキストとして配られる模様。講座に出席しなくても、出版物案内と購入申込 | 一般社団法人日本レオロジー学会から購入できる。

 新品で手に入る数少ないレオロジーの書籍であり、比較的新しい本でもある。レオロジーの本格的な書籍は、その多くが1950年代から1970年代にかけて出版されており、殆どが改訂されるどころか現在絶版になっている。その点、この本は1992年初版なので最近の部類に入る。

 流し読みしたところ、講義用テキストということもあってか懇切丁寧な解説というわけではなかった。一般的な大学の教科書レベルの加減。初学者には本書より丁寧な『レオロジー基礎論』(村上謙吉、産業図書)の方が良いかと思う。

 この本の特徴は取り扱い範囲の広さと実用を意識した理論の解説だとと思う。

 範囲の広さの例を挙げると、コロイド分散系や反応系のレオロジーは他の本ではあまり取り上げられていない。*1

 また2、3章では測定データ解析時に使用する理論の説明がなされていて*2、実用面でも役に立つ。『レオロジー基礎論』には、こういう点は解説されていなかった。

 例えば本書には代表的な粘度式が色々と紹介されていて、こういう系ではどういう粘度式を使えばよいのか迷ったときに非常に便利*3

 高分子液体の構成方程式を紹介している点も本書の有用な点だと思う。それほど詳しい解説ではなかったが、レオロジー流体力学の参考書にはあまり載っていない項目なので、とっかかりという意味では嬉しい。

 余談だが、粘弾性体の構成方程式を学習するには、連続体力学や塑性力学の本を読むしかないのかも。*4

 実は、この本の新しい版として『新講座・レオロジー』というA4版の書籍が2014年に制作されている。基本的には同じ内容だが、一部変更されているようなので両方買うのも良いかと思う。

 

 

 

 

 

*1:分散系レオロジーを解説した本に『コロイド科学のためのレオロジー』『分散系レオロジーと分散化技術』がある。

*2:無味乾燥なモデル紹介ではなく、きちんと式の変形も掲載されている

*3:4万円もする『レオロジーデータハンドブック』には理論や式、用語が紹介されていない。どちらかというといろいろな物質の測定データが載っている。

*4:中川鶴太郎『レオロジー』や中川喜代次『非ニュートン流体力学』には、粘弾性流体の構成方程式が掲載されている。