かなたはて

とりとめもないこと。

【レビュー】『現代化学工学』化学工学全般を概説した本

橋本健治、荻野文丸編『現代化学工学』産業図書

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【目次】

第1章 化学工学の基礎
第2章 流動
第3章 伝熱
第4章 物質の分離・精製
第5章 粉粒体の取扱いと分離
第6章 反応操作
第7章 プロセス制御

 

【感想】

 化学工学で使われる知識を広く浅く解説した本。

 そもそも化学工学の本には、本書のような化学工学全般を扱った概論本と各現象やプロセスを主に扱う各論本がある。

 初学者には、この本より『ベーシック化学工学』や『はじめての化学工学』などの初心者向けの概論本を勧める。脱初心者を目指す場合も、この本を読むくらいであれば『化学工学便覧』や各論を解説した本を読んだ方が良いと思う。というのは『現代化学工学』は化学工学で扱う科目全般を収録してはいるものの、各項目の解説に省略があり、かつ、分かりにくかったから。

 化学工学の本を読む目的は、単位操作(unit operation)やプロセス制御、移動現象論の調査、勉強が大半だ思う。しかし、386ページに、これらの内容を全て詰め込んだ『現代化学工学』は概説に終始しており、詳しい内容は橋本健治『反応工学』や『ベーシック分離工学』などの各論を取り扱った本に及ばない。

 この本では、単位操作の代表格である分離操作が約120ページ費やして第4章で解説されている。ここで取り扱われているのは、ガス吸収、蒸留、抽出、吸着、膜分離、乾燥、晶析である。約17ページで一つの分離操作を説明している都合上仕方ないのだろうが、もう少し踏み込んだ解説が欲しい箇所が多々ある*1

 最初に書いたとおり、『現代化学工学』を買うよりは『ベーシック化学工学』と各論を取り扱った本を買うことを勧める。

発行年月:2001.4 出版社: 産業図書 サイズ:22cm/386p

*1:一方で、例えば『分離プロセス工学の基礎』(朝倉書店)は殆ど同じ項目を240ページかけて解説しており、『現代化学工学』よりも詳細な解説を期待できる。ただし『分離プロセス工学の基礎』は読んだことがないので、実は予測が間違っているかも。