かなたはて

とりとめもないこと。

【レビュー】『いまさら流体力学』

著者:木田重雄

『いまさら流体力学

出版社:丸善出版

https://www.maruzen-publishing.co.jp/fixed//images/book/295194/295194.jpg

 

【目次】

1 流れを表す
2 渦は長生き
3 浴槽に水を張る
4 カルマンの渦
5 ゆで玉子となま玉子
6 どっちへ曲がる
7 台風は左巻き
8 スピンダウン
9 形を変えない波
10 船がつくる波
11 パターンが変わる
12 乱れに隠れた構造

引用:https://www.maruzen-publishing.co.jp/item/?book_no=295194

 

【感想】

 流体の挙動を紹介した読み物。ブルーバックスのような感じ。しかし、流体力学を全く知らない人が理解するのは難しいと思う。軽い読み物とはいえ、基礎は知っておいた方が理解しやすい。

 複雑な現象を易しく解説するのがコンセプトだと思う。だが、ある箇所は丁寧でわかりやすい解説かと思いきや、他の箇所ではもう少し行間を埋めて欲しいと感じることも。数式を使って理論的に解説している箇所もあるが、数式の導入が唐突な印象を受ける箇所もある。新書より少し大きいだけのB6版で複雑な現象を扱っているせいか、数式と言葉による解説のバランスが少し悪い印象を受けた。

 ここまで、悪いレビューしか書いていないが、本書は結構良い本だと思う。それは、回転流体を扱っている点である。

 普通、流体力学の本には回転流体の挙動はあまり詳しく解説されていない*1流体力学の本で取り扱われるのは、せいぜい、回転流体の界面形状くらい。しかし、この本ではエクマン層とかスチュワートソン層、テイラー渦などの回転流体独特の現象を解説してくれている。簡単な解説ではあるが、これらの記述があるのはありがたく、回転流体の理解へのとっかかりになる。

 ここまで書いて思ったのは、本書は流体力学を学びたい人ではなく、地球流体力学、海洋力学、気象力学を学びたい人に向いているのかもしれない。題材もそんな感じだし。

 他に似たような本として『流れの科学』(木村、東海大学出版会)や『流れのふしぎ』(ブルーバックス)がある。前者は本書と同様に気象系の題材が紹介されている。後者は非常に平易に流体の様々な挙動が解説されていて、流体の動きをイメージする訓練になるのではないかと思う。オススメ。

*1:『大学院のための流体力学』とか海洋学、気象学の本には回転流体のことが解説されているみたい