かなたはて

とりとめもないこと。

【レビュー】『ベーシック化学工学』 化学工学初学者にオススメ

著者:橋本健治

『ベーシック化学工学』

出版社:化学同人

 

【目次】

1章 化学工学とは
1.1 化学工業における製造工程が化学プロセス/
1.2 化学プロセスの開発はどのように行われるか/
1.3 化学工学はどのような分野からなっているか/
1.4 化学工学の適用範囲は化学工業だけではない

2章 物質とエネルギーの収支
2.1 量を表すには単位が必要/
2.2 物質の収支を計算する/
2.3 エネルギーの収支の計算法


3章 反応速度と反応器
3.1 化学反応をどのように分類するか/
3.2 反応器を操作法や形から分類する/
3.3 反応速度式を理解する/
3.4 反応率で量論関係を表す/
3.5 いろいろな反応器の設定方程式/
3.6 反応速度の解析と反応器の設計・操作/
3.7 反応が複合反応の場合の設計


4章 蒸留
4.1 蒸留の基礎となる気液平衡/
4.2 単蒸留は小規模な蒸留/
4.3 工業的に使われる連続蒸留


5章 ガス吸収
5.1 ガスの溶解度と吸収速度を計算する/
5.2 ガス吸収装置の分類と構造/
5.3 充填塔の高さを計算する/
5.4 充填塔の直径を計算する


6章 抽出
6.1 抽出を理解するための液液平衡関係/
6.2 液液抽出装置とその操作法/
6.3 液液抽出を計算する


7章 流体の流れ
7.1 管を流れる流体の流れの物質収支
7.2 流れのエネルギー収支を求める/
7.3 管内の流れのさまざまな性質/
7.4 摩擦などによる流れのエネルギー損失/
7.5 流体輸送機に与える動力の計算


8章 熱の移動
8.1 熱伝導による熱の移動/
8.2 対流による熱の移動/
8.3 放射による熱の移動/
8.4 熱交換器の設計


9章 調湿と乾燥
9.1 湿り空気の性質を学ぶ/
9.2 熱と物質が同時に移動/
9.3 湿度図表とその使いかた/
9.4 調湿操作と冷水操作/
9.5 乾燥が進む過程を解析する/
9.6 乾燥時間を計算する/
9.7 さまざまな乾燥装置


10章 流体からの粒子の分離
10.1 粒子の大きさとその分布/
10.2 単一粒子の運動を解析する/
10.3 液体から粒子を分離する方法/
10.4 濾過によって粒子を分離する/
10.5 気体からの粒子の分離

引用:https://www.kagakudojin.co.jp/book/b50490.html

 

【感想】

 今までの化学工学の記事で、本書についてさんざん言及してきたにも拘わらず、レビューを書いていなかったので、簡単にレビューを書く。

 本書は化学工学の概論本であり、単一の単位操作を扱った各論本ではない。そのため取り扱い内容は広く浅く、本格的に各現象を調べるには不向き。

 本書は、調査用の参考書としてではなく、学習用の自習書として活躍する。

 先に書いたように本書の内容はそれ程深くない。しかし、化学工学を学ぶ上で必要となる項目は概ね網羅している。また、基礎事項や要点もしっかりと抑えている。加えて、本文の解説や例題の解答が丁寧で非常に教育的である。惜しむらくは章末問題が略解のみという点だが、例題を解くだけでも基礎学力は身につくと思う。初学者にオススメ。

 本書よりもさらに簡単で優しい本に『はじめての化学工学』(草壁、丸善)がある。この本は化学工学の基本の基本から優しく解説している。本書が難しかった場合や化学工学を全く知らない人にオススメ。

 本書を読み終えた後は、自分が必要としている単位操作を扱った各論の本に進むか、あるいは『標準化学工学』を読むと良いと思う。『標準化学工学』も本書と同じように例題の解説が丁寧で演習形式で化学工学を学べる。

 各論の本は色々と探すしかないのだが、Amazonやhontoで検索に出てこないものもある。そういう本は学会などが編纂しているのだが、市販の本には書いていない有益で深い情報が載っていることが多々ある。例えば分離技術会の本や化学工学会発行の『最近の化学工学』や『化学工学の進歩』を探ってみてはどうかと思う。後者は三恵社化学工学会の出版物のページ化学工学会東海支部から検索できる。

 以下余談。化学工学は昔の本を復刊するか、新しく決定版となる本を出してほしい。最近の本よりも古い本の方が詳しくて丁寧ってどういうことなのか。『化学工学便覧』は所詮は辞典なので自学自習にはちょっと使いにくい。

 

 2020/11/2追記。最近増補版が出たみたい。以下出版社のリンク

www.kagakudojin.co.jp