かなたはて

とりとめもないこと。

【レビュー】『非ニュートン流体力学』

著者:中村喜代次

『非ニュートン流体力学

出版社:コロナ社

 

https://www.coronasha.co.jp/imgs/cover/9784339043365.jpg

 

【目次】

1. 序論
2. ベクトルとテンソル
2.1 ベクトル
  2.1.1 内積
  2.1.2 外積
  2.1.3 基底変換
2.2 テンソル
  2.2.1 双線形形式
  2.2.2 テンソル
  2.2.3 テンソルの定義
  2.2.4 対称テンソルと交代テンソル
  2.2.5 基底変換
  2.2.6 テンソルの古典的な定義
  2.2.7 縮約
  2.2.8 テンソルの商法則
  2.2.9 ガウスの発散定理
2.3 テンソルの不変量と極分解
  2.3.1 テンソル成分の対角化
  2.3.2 不変量
  2.3.3 極分解
3. 連続体力学の原理
3.1 物体の運動
3.2 変形こう配と変形テンソル
3.3 相対変形こう配
3.4 ひずみ
3.5 変形速度と回転速度
3.6 運動法則と応力
  3.6.1 応力ベクトル
  3.6.2 運動の法則
  3.6.3 応力テンソル
3.7 保存則と場の方程式
  3.7.1 レイノルズの輸送定理
  3.7.2 連続の式
  3.7.3 運動方程式
  3.7.4 角運動量
  3.7.5 エネルギー方程式
3.8 物質客観性の原理
  3.8.1 物質客観性の原理
  3.8.2 速度こう配,変形速度,回転速度テンソルの物質客観性
  3.8.3 物質客観性の原理を満たす微分
補足
4. 非ニュートン粘性流体の流れ
4.1 ニュートン流体
4.2 基本的な流れ
  4.2.1 せん断流れ
  4.2.2 伸長流れ
4.3 非ニュートン流体のせん断粘度
4.4 非ニュートン流体の流れ
  4.4.1 速度分布
  4.4.2 流量
4.5 粘塑性流体
  4.5.1 ビンガム塑性流体
  4.5.2 Casson流体
4.6 擬塑性流体
  4.6.1 円管内流れの実験
  4.6.2 べき乗則流体の構成式
  4.6.3 べき乗則流体を用いたときの相似則
  4.6.4 べき乗則流体のポワズイユ流れ
5. 線形粘弾性体
5.1 マクスウェルおよびフォークトモデル
  5.1.1 マクスウェルモデル
  5.1.2 フォークトモデル
  5.1.3 サン・ブナンモデル
5.2 三要素モデル
  5.2.1 三要素固体モデル
  5.2.2 三要素流体モデル
5.3 多要素モデル
5.4 履歴積分汎関数
  5.4.1 クリープ関数
  5.4.2 物体の性質が時間で変化しない場合
  5.4.3 緩和関数
5.5 演算子
5.6 動的粘弾性
  5.6.1 周期的応力を与えられたフォークト物体
  5.6.2 周期的ひずみを与えられたマクスウェル物体
5.7 線形粘弾性を表す一方法
  5.7.1 クリープ
  5.7.2 応力緩和
6. 粘弾性流体
6.1 線形粘弾性流体
6.2 マクスウェル型の構成式
  6.2.1 経験式の一般化
  6.2.2 積分型の構成式
  6.2.3 微分型の構成式
  6.2.4 せん断流れ
  6.2.5 伸長流れ
  6.2.6 マクスウェル型構成式を用いたときの相似則
6.3 Oldroydモデル
  6.3.1 Oldroydの3定数モデル
  6.3.2 Oldroydの8定数モデル
6.4 Giesekusモデル
6.5 準線形積分型構成式
6.6 Kaye-BKZ型の構成式
6.7 Leonovモデル
参考書
索引

引用:非ニュートン流体力学 | コロナ社

 

【感想】

  非ニュートン流体の流動を取り扱った参考書(絶版)。標準的な大学の教科書といった印象で、とりわけ丁寧だったり、不親切だったりするわけではなかった。 自分は4、5、6章のみ読んだ。

 

 1章では粘弾性流体の現象やレオロジーの歴史を簡単に説明していた。

 2章では連続体力学に使うテンソルの公式を解説。

 3章では連続体力学の基礎を完結に説明。

 4章では流体力学の基礎をさらりと説明するとともに、ビンガム流体などの円管内速度分布を導出。この章の対象はあくまで非弾性体で、粘弾性流体は5、6章で解説していた。

 5章はマクスウェルモデルやフォークトモデルを使って粘弾性モデルとそのパラメータの基礎を解説していた。三要素モデルの詳細な説明やカールソン変換を用いた演算子法の解説もあった。

 6章では5章の内容を元にして、粘弾性流体の様々な構成方程式を解説していた。読み解くにはテンソルと線形粘弾性モデルの基礎知識が必要。これまでに提案されてきた様々なモデルを紹介している。数値計算する際の参考になるかもしれない。この章には何らかの理論を使った天下り式の説明を期待していたが、どうも違っていたみたい。悪く書けば、6章は粘弾性流体の単なるモデル紹介に留まっていた。自分は難しかったのもあって途中で断念した。

 

 連続体力学の参考書では有限要素法や弾性力学に主眼が置かれがちで、粘塑性流体や粘弾性流体を取り扱った連続体力学の教科書はあまり見かけない。そういう点で本書は珍しく粘弾性流体を取り扱ってくれているのがうれしい。

 もし英語に抵抗がなければ粘弾性流体を学ぶ際は『Understanding Rheology』も良いかと思う。自分はチラ見しただけだが、分厚いだけあって内容は親切で詳しそうだった。