かなたはて

とりとめもないこと。

【レビュー】『レオロジー基礎論』レオロジー初学者にお勧め

村上謙吉『レオロジー基礎論』産業図書

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【目次】

  1. レオロジーとは何か?
  2. 典型的な弾性変形
  3. 理想的な流動変形
  4. 典型的な粘弾性変形 <静的な場合>
  5. 典型的な粘弾性変形 <動的な場合>
  6. 時間換算則,合成曲線,WLF則
  7. 非線形粘弾性
  8. 最近のレオロジー研究の話題

 

【感想】

 レオロジー初級者向けの本。基礎的なことは大体書いてあると思う。

 1章:レオロジーの概略が書かれていた。

 2章:熱力学を使って、エントロピー弾性とゴム弾性を解説していた。

 3章:ニュートンの粘性則からアイリングの空孔理論を解説。

 4章:マクスウェルモデルやフォークトモデルを解説。

 5章:マクスウェルモデルやフォークトモデルの周波数応答を解説。複素弾性率などを解説。

 6章:時間換算則、重ね合わせの原理の解説。

 7章:粘弾性の非線形領域の取り扱い方の解説。線形領域の知識をある程度、適用できるという話だった。

 8章:読み飛ばした。

 

 物質にひずみや力を与えた時の分子の動きを、様々な例えを使って分かりやすく解説してくれていた。特に、高分子に力を加えたときの挙動や緩和時間の考え方などはよく分かると思う。またマクスウェルモデルやフォークトモデルも式を省略せずに説明しているので、粘弾性モデルの基礎であるこれらのモデルの理解につまづくことはないと思う。

 但し、基礎論ということもあってか、もう少し詳しく説明して欲しい項目が何カ所かある。例えば、緩和スペクトルについてあまり詳しく説明されておらず、もう少し突っ込んだ記述や具体例がほしかった*1。あとは、デボラ数についても記述がなかった。その他、各レオロジーモデルが実物にどのように適用されるのかをもう少し詳しく知りたかった。これらは他の本で勉強したいと思う。

 これよりやさしいレオロジーの本として『流れる固体』がある。この本は非常にオススメ。図書館の取り寄せサービスで借りると良いと思う。他の初心者向けの本に『レオロジー基礎論』の著者が書いた『やさしいレオロジー』があるが、内容が『レオロジー基礎論』と似通っているので推奨しづらい。

 新品で手に入るレオロジーの本がこれくらいしかないのも困りものだと思う。

 

*1:と思ったが、他の書籍を読むと、本書は緩和スペクトルについてかなり詳しく解説している事が分かった。本書は緩和スペクトルの具体的な算出法を解説しているが、これは他の本にはあまり載っていないと思う